歌と歌詞の関係

歌には歌詞が付いていて(無いものもありますが)、これが歌を他の器楽演奏とは違う、極めて特殊なものにしていると思います。

歌が音と歌詞で成り立っている以上、両者の関係はとても重要なものになるでしょう。例えば同じメロディーを歌う場合でも、歌詞が明るいものとシリアスなものとがあれば、曲調はやはり変わってくると思います。

歌詞はまた、フレージングにも大きく影響します。歌詞のまとまりの途中で切ると変な感じになるからです。また、言語の違いも演奏の仕方を左右すると思います。下の譜例を見てください。

izatate ja

 

無伴奏合唱曲として有名な、「いざたて戦人よ」冒頭です。歌詞が音に自然に乗って、良い感じですね。

今たまたま手元にある楽譜(新選混声合唱名曲集1 教育芸術社出版)には、日本語の歌詞に合わせて英語の歌詞も載っています。書き直したものを示します。

izatate en

 

日本語の歌詞で歌うのに慣れていると、初めてこの歌詞で歌うのに違和感を感じるのではないかと思います。ここでは特に「of salvation」ですが、実際の発音では「o – of sa – al – va – tion」となり、楽譜上の1音と歌詞の1音が対応している日本語とはちょっと違いますね。また最後の「Head」のバスですが、歌うと「he – e – e – ed」となります。別に悪くは無いと思いますが、「つ づ け」と発音できた方が爽快感はある気がします。

曲全体を通して、この譜面は日本語で歌うために調整して書かれているものであり、マクグラナハンが最初に合唱用として書いた楽譜は音型がちょっと違ったのではないかと想像されますが、残念ながら手元に原曲の楽譜がありませんので正確なことは言えません。

結局何が言いたかったかというと、この例では、この譜面のままで英語の歌詞を付けて歌うのは何か違うのではないか、ということです。そして一般に、歌詞が変わると歌い方も変わる場合があるから注意、ということでした。

因みに「いざたて戦人よ」ですが、これは元々歌詞はドイツ語だったようです。